【AMR】薬剤耐性の脅威、オニールレポートと私たちにできること

薬剤耐性 AMR オニールレポート 海外規制や英語関連

AMR(薬剤耐性)とは?

AMRはAnti Micro Resistanceの略で薬剤耐性のことを意味しています。薬剤耐性を起こすのは、最近やウィルスや寄生虫などですが、近年問題になっているのは抗生物質の濫用などによる薬剤耐性菌です。

抗生物質はペニシリンが1928年に開発されて以降、次々と新しい抗生物質が開発・使用されてきました。様々な感染症に用いられ、もちろんその効用があってこそ今のような人類の発展があったのですが、同時に問題も警告されてきました。

抗生物質は病気の原因となる菌をやっつけますが、もともと存在している良い菌(常在菌)もやっつけます。そんな中で生き残った菌が薬に対して耐性を獲得して薬剤耐性菌となり、他の菌がいない状況でエサは十分にあるのでどんどん増殖していきます。抗生物質が効かないため、病院などで集団感染を起こしたりするのです。

なぜAMRが脅威?オニールレポートによる問題提起

イギリス政府の調査結果を経済学者Jim O Neill氏がまとめたレポート(オニール・レポート)が2014年にまとめられ世界に衝撃を与えました。

出典:オニールレポート

(Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nation)

レポートによると、もしAMRに対してこのまま何も対策を取らない場合、2050年には世界で1000万人の人がAMRにより死亡する、それはがんによる死亡者数820万人を上回る、と予測されています。

出展:オニールレポート

AMRが起こる原因

なぜAMRが起こってしまうのでしょうか。

主な原因は抗生物質のAbuse(濫用)とOveruse(過量使用)です。

最近は減ってきましたが、数十年前までは、風邪で病院を受診すると大体抗生物質が処方されていました。風邪の原因はほとんどがウィルスによるもので、抗生物質は細菌をやっつける薬なのでウィルス性の風邪の人が飲んでも効果はありません。

しかしなんとなく安心感を求めて患者側から希望してしまったり医者側も安易に処方してしまったり、というのが慣行になっていました。もちろん、高齢の患者さんで細菌性の肺炎などを併発する可能性が考えられる場合などに抗生物質を処方することはもっともなことです。しかしそのようなケースでない限り、健康成人や子供の風邪には抗生物質は不要なのです。

また、日本では経口抗生物質は医療用医薬品として医師の処方箋無しでは入手できないようになっていますが、諸外国では処方箋無しでドラッグストア等で簡単に抗生物質を買って個人の判断で飲むことができる国もあるそうです。そういった状況も間違った使用や濫用の原因となっています。

また、ヒトに対する使用だけでなく、動物に対する使用、すなわち畜産業界においても抗生物質は多用されています。抗生物質を肥料に混ぜて与えることで動物たちの病気を防ぎ成長を早めたりします。

AMRに対するアクションプラン

AMRをどうしたら改善していけるかという実際の行動計画を厚生労働省が2016年に発表しています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf

アクションプランは、国民への啓蒙活動、抗生物質使用量の継続的モニタリング、適切な感染予防の実践、ヒト・動物に対する適正使用、薬剤耐性の研究、国際協力の6つの枠組みになります。

私達にできることは?

AMR  薬剤耐性 抗生物質
Stay healthy

まずはとても基本的なことですが、よく食べ、よく寝て、適度な運動をして、健康でいること。これが一番の基本です。健康を保つことにより、身体の抗体機能をしっかりさせ、様々な感染症から身を守ることができます。これはCOVID-19に対しても言えることですね。過度なストレスもよくないです。

あとは衛生観念を持つこと。コロナ対策でかなり衛生観念も上がったと感じますが、世界的な衛生観念のレベルアップはまだまだのようで、外国の調査ではホテル内トイレから出てきた人の複数が手を洗っていなかったといったことも報告されています。

また、例えば家族に処方された抗生物質が余ったからといって家に残しておいて自分が具合の悪い時に飲むといったことは絶対にしないこと。例えば4日分の抗生物質が処方された場合には2日分飲んで良くなったからといって途中で飲むのを止めるのではなく最後まで飲み切ること。とにかく安易に抗生物質を服用するのはやめて、不安のある場合には医師や薬剤師に相談してみましょう。

Amazon.co.jp
タイトルとURLをコピーしました